プレスリリース: 反強磁性スピンを非常に小さな磁場で操作することに成功
東京大学大学院理学系研究科の諏訪助教は、テネシー大学、ブルックヘブン国立研究所、アルゴンヌ国立研究所、カレル大学の研究グループと共同で、反強磁性スピンを小さな磁場で操作することに初めて成功しました。これまでの多くの磁性デバイスは強磁性スピンを用いたものですが、もし反強磁性スピンを利用することができれば、より高速にスイッチング可能な大容量デバイスができると期待されています。しかし通常、反強磁性体は正味の磁化を持たないため、磁場に対して大きく応答しません。そのため反強磁性スピンの操作は長い間難しい問題となっていました。研究グループは、人工的に作成した新しい物質を利用することで、この問題を初めて解決しました。スピン間の相互作用係数と比較して、わずか0.1%以下の非常に小さい磁場で反強磁性秩序をスイッチングすることに成功しました。さらにこのメカニズムを理論的に説明し、コンピュータによる計算を用いて定量的に解析しました。反強磁性スピンの磁場による操作を可能とした本研究の成果は、今後の高性能デバイスの開発につながると期待されます。
東京大学大学院理学系研究科のプレスリリース: http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/5923/
発表論文: Lin Hao, D. Meyers, Hidemaro Suwa, Junyi Yang, Clayton Frederick, Tamene R. Dasa, Gilberto Fabbris, Lukas Horak, Dominik Kriegner, Yongseong Choi, Jong-Woo Kim, Daniel Haskel, Philip J. Ryan, Haixuan Xu, Cristian D. Batista, M. P. M. Dean, Jian Liu, Giant magnetic response of a two-dimensional antiferromagnet, Nature Physics, https://www.nature.com/articles/s41567-018-0152-6.