量子磁性体におけるランダムネス誘起量子相転移
強い量子ゆらぎに支配されている低次元量子反強磁性体への不均一性(ランダムネス)の効果は, 量子統計力学的立場からだけではなく, 実際の応用をともなう工学的な見地からも, 重要かつ興味深い問題の一つである. 我々は, 長距離ネール秩序をもつ二次元反強磁性体へのスピン希釈の効果を大規模数値シミュレーションにより研究し, 量子効果とランダムネスとの相乗作用を明らかにした. 一方で, 基底状態としてスピンギャップ状態を持つ系の場合には, 量子効果とランダムネスはお互いに競合し, ランダムネスにより長距離ネール秩序が誘起されるという興味深い現象が実験的にも観測されている. 我々は, これらの量子相転移における, ランダムネスのタイプによる効果の違いを詳細に調べ, いくつかのユニバーサリティクラスに分類できることを明かにした. さらに, 「量子グリフィス効果」と呼ばれる, ランダム量子系に特有のスローダイナミクス現象についても研究を行っている.