フェリ磁性体スピネル化合物における顕著なスピン格子結合

Miyata-etal-2020-fig4.jpgこれまで反強磁性体では、スピンフラストレーションとスピン格子結合の競合現象が起きることが知られていた。このような現象が他の系や物質でも生じるのかどうかは興味深い問題である。我々はフェリ磁性体スピネル化合物においても、スピン格子結合が重要な役割を担うことを明らかにした。フェリ磁性体スピネル化合物MnCr2S4の磁化曲線を110テスラの高磁場まで調べ、新たな磁場誘起相転移を発見し、磁場温度相図を決定した。また磁歪と超音波を60テスラまで測定し顕著なスピン格子結合を見出した。この物質に対する有効模型を考案し、モンテカルロ計算を用いて実験結果を高精度で再現することに成功した。実験的に観測された巨大プラトー相と非対称スピン秩序相が、スピン格子結合により安定化されることを明らかにした。我々が発見した非対称スピン秩序相ではマルチフェロイックな性質が創発されるため、今後の工学的応用が期待される。

  • A. Miyata, H. Suwa, T. Nomura, L. Prodan, V. Felea, Y. Skourski, J. Deisenhofer, H.-A. Krug von Nidda, O. Portugall, S. Zherlitsyn, V. Tsurkan, J. Wosnitza, and A. Loidl Spin-lattice coupling in a ferrimagnetic spinel: Exotic H-T phase diagram of MnCr2S4 up to 110 T, Phys. Rev. B 101, 054432 (2020), preprint: arXiv:1911.12103