実験データと第一原理計算を組み合わせた結晶構造決定
結晶構造推定は非常に難しい問題として古くから知られており、様々な推定方法が開発されてきた。特に最近では、実験データがある場合にはエネルギーの最適化と実験データの再現を同時に行うことによって、結晶構造推定の成功率を上げられることが知られてきている。その際に用いられる方法は、実験データの再現度とエネルギーを足し合わせた新しい評価関数を用いて最適化を行うと言った方法である。しかしながら、2つの評価関数を 足し合わせてしまっているため、それぞれの評価関数の情報が失われてしまうといった欠点がある。我々は2つの評価関数の同時最適点を探る方法として重ね合わせ最適化法を開 発し、その性能について調査を行なっている。例えばSiO2系は、エネルギーの局所最 適点が多く存在するため結晶構造を決定するのが難しい系であるが、我々の方法を用いることで結晶構造の推定精度が大幅に上昇することことを確認した。
- 藤堂眞治, 常行真司, X線回折実験とシミュレーションのデータ同化による結晶構造解析, 日本結晶学会誌 62, 51-55 (2020).
- Daiki Adachi, Naoto Tsujimoto, Ryosuke Akashi, Synge Todo, Shinji Tsuneyuki, Search for Common Minima in Joint Optimization of Multiple Cost Functions, Comp. Phys. Comm. 241, 92-97 (2019). (preprint: arXiv:1808.06846)
- Naoto Tsujimoto, Daiki Adachi, Ryosuke Akashi, Synge Todo, Shinji Tsuneyuki, Crystal structure prediction supported by incomplete experimental data, Phys. Rev. Materials 2, 053801 (2018). (preprint: arXiv:1705.08613)