スピン軌道絶縁体における励起子ボーズ・アインシュタイン凝縮

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近年注目を浴びている 5d 軌道の電子系では電子間相互作用とスピン軌道相互作用の両方が重要になります。我々はスピンと軌道が強く相互作用する場合、電子間のクーロン相互作用が励起子(電子と正孔の結合状態)を安定化させボーズ・アインシュタイン凝縮を引き起こすことを示しました。このように励起子のボーズ・アインシュタイン凝縮により生じる絶縁体相は励起子絶縁体と呼ばれ、現実の物質ではこれまでほとんど見つかっていませんでした。今回提案した理論を 5d 軌道の電子系であるイリジウム酸化物に適用し、2層系が長い間探されてきた励起子絶縁体であることを予言しました。またこの2層系の物質は、励起子がボーズ・アインシュタイン凝縮を起こす量子相転移のすぐ近くにあることを理論的に見出しました。相対論の効果でスピンと軌道が強く相互作用する 5d 電子系では、電子間のクーロン相互作用と電子の運動エネルギーが同程度であることが本質的に重要となることを示しました。