キタエフスピン液体のテンソルネットワーク解析

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近年、強いスピン軌道相互作用の存在により、有効スピンの間に異方的なキタエフ相互作用を持つ物質群が注目を集めている。キタエフ相互作用のみが存在するハニカム格子上のS=1/2量子スピン模型(キタエフ模型)の基底状態は非磁性のスピン液体状態になっており、このような"キタエフスピン液体"が現実の物質で実現する可能性が議論されている。我々は、以前に提案したキタエフスピン液体のテンソルネットワーク表現(ループガス状態)を拡張することで、スター格子と呼ばれる格子上でのキタエフ模型の基底状態相図を計算した。その結果、ループガス状態は、「カイラルスピン液体」と呼ばれるスピン液体をを定性的・定量的に表現することができ、さらに、異なるカイラルスピン液体(AbelianとNon-Abelian)の間の相転移も表現できることを明らかにした。また、RuCl3の有効模型に対する磁場中基底状態の解析にもテンソルネットワーク表現を適用し、磁場の印加によりゼロ磁場での磁性状態が抑制されて、非磁性状態が安定化することを明らかにした。

  • Hyun-Yong Lee, Ryui Kaneko, Li Ern Chern, Tsuyoshi Okubo, Youhei Yamaji, Naoki Kawashima, Yong Baek Kim, Magnetic field induced quantum phases in a tensor network study of Kitaev magnets, Nat. Comm. 11, 1639 (7pp) (2020). (preprint: arXiv:1908.07671)
  • Hyun-Yong Lee, Ryui Kaneko, Tsuyoshi Okubo, Naoki Kawashima, Abelian and Non-Abelian Chiral Spin Liquids in a Compact Tensor Network Representation, Phys. Rev. B 101, 035140 (9pp) (2020). (preprint: arXiv:1907.02268)
  • Tsuyoshi Okubo, Kazuya Shinjo, Youhei Yamaji, Naoki Kawashima, Shigetoshi Sota , Takami Tohyama, Masatoshi Imada,
    Ground-state properties of Na2IrO3 determined from an ab initio Hamiltonian and its extensions containing Kitaev and extended Heisenberg interactions,
    Phys. Rev. B 96, 054434 (2017)